腐食促進試験機特集「3分でわかるサビのお話」

特集「3分でわかるサビのお話」

サビ

  • ねじがサビついてしまって回らない…
  • 自転車のサビがいつの間にか目立っている…
  • 機械がサビてなめらかに
    動いてくれない…

サビは少し困り者の、そしてとても身近な現象です。

サビの原因


   鉄鉱石( 赤鉄鉱 / ヘマタイト )

鉄は何故サビてしまうのでしょうか?
自然界に存在する鉄は サビた状態で鉄鉱石として存在しています。 実は、私達が普段目にする鉄は、サビていた鉄を 人工的にサビていない状態にしたもので、 サビる事は鉄にとって元に戻ろうとする 自然の姿です。

鉄鉱石から鉄を取り出す

鉄鉱石に含まれる「サビた鉄」は、化学式では酸化鉄 Fe2O3( Fe:鉄、O:酸素)と表記されます。 酸化鉄を高温の溶鉱炉で処理すると酸化鉄から酸素が切り離され、鉄だけを取り出す事ができます。

Fe2O3+3CO → 2Fe+3CO2


        溶鉱炉( 転炉 )

サビに関する専門用語

サビる事は、専門的には「腐食」と呼ばれます。普段聞き慣れない言葉も出てきますので、ここで整理しておきます。

日常表現 専門用語
サビる事 腐食(ふしょく)
サビることを防ぐ事 防食(ぼうしょく)
防錆(ぼうせい)
サビにくい性質 耐食性(たいしょくせい)
サビる速度 腐食速度(ふしょくそくど)

サビる条件・サビやすさの促進要因

サビる条件
一般的に、サビるためには金属に水と酸素が接触する必要があります。
逆に言えば、水と酸素に接していなければ金属はサビることはありません。

サビやすさを促進する要因
サビるかサビないか以外にも、サビやすいかサビにくいかという条件もあります。
サビやすさの要因には、例えば次のようなものがあります。

  • ●水分量
  • ●酸素量、溶存酸素量(水の中に溶けている酸素)
  • ●高温
  • ●塩分量
  • ●水流速度
  • ●高湿度
  • ●付着液体の酸性度
  • など

サビを防ぐ技術(防食技術)

サビを防止するためには、水と酸素を金属から遮断する事が基本となります。

防食手法 特徴 具体例
合金化 材料自身の表面がサビる事で不動態被膜と呼ばれる緻密な酸化皮膜を形成し、材料全体を保護する ステンレス
(鉄にクロムを含有させた合金)
めっき 電気的・化学的に表面に保護層を形成する手法 亜鉛めっき、スズめっき、金めっき、銀めっきなど
塗膜 塗装
(ペインティング)
下塗り(プライマー)処理とセットとなるコーティング手法を指す事が多い
コーティング 塗膜を形成させる処理一般の呼称
ライニング コーティングに比べ膜厚が厚いものを呼ぶ事が多い フッ素樹脂、ゴム、ガラス材(ホーロー)、ポリエチレン樹脂など
クラッド鋼 塗膜の代わりに別種類の金属を強力に貼り合わせた素材 炭素鋼+ステンレス
炭素鋼+ニッケル
炭素鋼+アルミニウム
など

防食性試験の重要性

製品や建築物を作る際には、防食性能を考慮する事は重要で、特に人命に関わる製造物の場合は規格に準拠し一定以上の防食性能を確保する事が必須です。

例えば、自動車では、もし潮風の影響、降雪地帯での融雪剤などの過酷な影響により、足回りや マフラーなどが簡単に腐食してしまえば、重大な故障や事故へとつながってしまいます。

建築物では、鉄筋コンクリートの内部鉄筋がサビると、コンクリートが内部から圧迫され割れや剥落(はがれ落ちる事)、崩壊につながりますので、鉄筋には十分な防食性能が求められます。

塩水噴霧試験(SST)と複合サイクル試験(CCT)

サビにくさを評価するには次のような代表的な方法があります。

●屋外暴露試験(大気暴露試験)
 実際に試験材料を屋外に長期間設置し防食性能を評価する試験方法

●腐食促進試験
 屋外暴露試験と相関性のある防食性能試験を装置を使って短期間で得る加速試験

腐食促進試験には例えば、塩水を連続噴霧する「塩水噴霧試験(SST)」や、塩水噴霧工程以外に乾燥、湿潤の工程を順に繰り返す「複合サイクル試験(CCT)」などがあります。

塩水噴霧試験(SST: Salt Spray Test)

JIS Z 2371(日本工業規格), ISO 9227(ISO規格), ASTM-B117(ASTM規格)などに規定されています。
具体的には
●中性塩水噴霧試験(NSS: Neutral Salt Spray Test)
●酢酸塩水噴霧試験(ASS: Acetic acid Salt Spray Test)
●キャス試験(CASS: Copper Accelerated Acetic Acid Salt Spray Test)
の3つの塩水噴霧試験の事を指します。

複合サイクル試験(CCT: Cyclic Corrosion Test)

JASO M 609, M610(日本自動車技術会規格), JIS H 8502, JIS K 5621(日本工業規格)などに規定されています。
複合サイクル試験(CCT)は塩水噴霧試験(SST)よりも新しい規格で、より現実に近い結果を得られると考えられています。

例えば、JASO M609(日本自動車技術会規格)の規格の場合は、塩水噴霧試験機を使い
次のような複合サイクル腐食試験(CCT)によって評価します。

その他の防食性能に関する規格

他にも、自動車部品、建材、塗料などには次のような規格があり、状況に応じて規格を満たす事が求められます。

JASO M609, CCT-1, CCT-2, CCT-4, VDA233-102, SAE J2334, GM9540P, STD4233, AA-0324, FLTM BI 103-01 など

塩水噴霧試験(SST)機/複合サイクル試験(CCT)機

塩水噴霧試験機や複合サイクル試験機は、温度と湿度を制御可能で、密閉可能な試験機に試験材料をセットし、塩水を均一に散布したり、複合サイクル試験機の場合はさらに乾燥、湿潤などの変化を与え、サビ方などを評価できるようになっています。

塩水噴霧試験機には「噴霧塔方式」、一度天井に当てる「壁あて方式」の2種類の噴霧方式の試験機がありますが、どちらも規格には合致しています。

また、さまざまな規格に対応するために、冷凍機を積んで氷点下に温度設定できる試験機や、噴霧ではなく試験材料に直接塩水をかけるシャワー機能がついた試験機などもあります。

最後に

サビはとても身近な存在です。

例えば使い捨てカイロの中には鉄粉が入っていて、封を切ると鉄粉が空気中の酸素と反応しサビ始めます(酸化反応が始まります)。サビる時には酸化熱が発生するのですが、カイロの暖かさは実は鉄粉がサビる時の熱なのです。

また、自由の女神は銅でできていますので、実は自由の女神は最初は銅のそのままの色、すなわち茶色だったのですが、他の多くの銅像と同様、時間とともに銅のサビである緑青(ろくしょう)に覆われ、現在の緑色の自由の女神になりました。
(左の画像は資料を元に色を加工したものです)

サビは身近な存在だけに、興味を持つと、いろいろなところで問題になったり、役に立っている事がよく見えてきます。

計測展がおすすめする 腐食促進試験機

塩水噴霧試験は、従来から(通常は国際的な試験標準に準拠する形で)実際の製品性能と予想を比較するための優れた腐食試験であると考えられています。このため、品質監査では非常に一般的な試験になっています。

製品詳細

CCTは、従来の暴露試験と、温度/湿度の可変を含む制御されたさまざまな試験環境下での塩水噴霧を組み合わせて、お客様の要件に従い耐用年数条件について等を考慮したシミュレーション環境を生成します。このため、CCTは特に製品の耐用年数を予測するのに最適です。

製品詳細

アスコット社のCCT試験機に対して、Atmosfarには、フォードやボルボなどの特殊な試験要件への適合を実現する追加機能が装備されています。中でも注目すべきは、この試験機には、ハイレベルな「振動(swaying)」噴霧バーによる塩水噴霧アプリケーション、垂直方向の高速空気乾燥、冷蔵除湿が含まれていることです。

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重大な試験用の最高純度の塩。 厳格なASTM B117を含むすべての塩水噴霧試験用。

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