3分でわかるIMU(6軸センサ)のお話

ゲームコントローラーで人の動きをキャッチできるのは、なぜ?
家庭用ゲーム機のCMの中で、専用リモコンをラケットに見立てて対戦相手とテニスをしている光景をみたことはないでしょうか?テニスのほかにも野球、ボーリング、ボクシングなど様々なスポーツをこの特殊なリモコンを使用して楽しむことができます。この特殊なリモコンがプレーヤーの複雑な動きを検知して、ゲーム機にフィーバックしているわけです。このリモコンにはIMU(通称:6軸センサ)が利用されています。
一般家庭にも普及するこのセンサですが、計測シーンにおいても広く利用されています。
本稿ではこのIMUについて、概説していきます。
IMUとは?
IMU(inertial measurement unit)は運動の3軸方向の「角速度や加速度」を計測する装置です。慣性計測装置と和訳されますが、そのままアイ・エム・ユーと呼ばれるのが通常ですが、6つの計測値を得ることができるため、「6軸センサ」と呼ばれることもあります。
IMUは計測器に使用されるような高価な製品のほかに、安価なチップ型IMUも流通しているのでカーナビ・スマホからゲーム機のリモコンまで広く搭載されています。
IMUの出力するデータは計測対象の姿勢データの取得や制御のために利用されます。さらに走行距離計やGNSSデータと組合わせることで自動運転や高精度な位置・姿勢角の測定にも利用されます。

IMUの中身はどんなもの?
IMUは主に加速度センサ、ジャイロセンサの2つのセンサで構成されます。ユーザはこれらのセンサの出力データを計算処理して、計測対象の速度や姿勢角を得ることができます。
このうちジャイロセンサは計測中に経過時間によって誤差が蓄積する性質があるため、外部センサによって誤差を校正する必要があります。とりわけ、ヨー方向(ヘディング方向)は磁気方位センサやGNSS受信機の出力を利用して校正することが一般的です。

しかし、GNSSや磁器方位センサも常に信頼できる値が得られるわけではありません。たとえば、GNSS衛星が十分に見えないような場所であれば有効な方位角を得ることができません。磁器方位センサーは地球の磁力を利用しますが、これはややぜい弱です。
そのためIMUはできるだけジャイロセンサに蓄積する誤差が小さいものを選択できるのが理想的です。
以下ではもう少しこのジャイロセンサに関する知識を掘り下げます。
ジャイロセンサの方式を知ろう
ジャイロセンサにはいくつかの方式がありますが、計測器として利用する場合は、MEMS方式とFOG方式を知っていればよいでしょう。MEMS方式は微細な振動子が回転しているときに発生する力を応用して回転速度を計測します。電子基板上に実装することができるため、スマホや家庭用ゲーム機などにも利用され、小型化、大量生産に適しています。
VectorNav社 MEMS 式IMUの画像
二つ目のFOG式は、MEMSよりも高精度・安定的に回転角を計測する場合に使用され、例えば航空機の機体の姿勢制御に利用されます。
FOGは光ファイバーをコイル状に巻いたユニットで光の位相差を測定することで角速度を高精度に測定します。
emcore社 FOG式IMUの画像(左:FOG本体 右:筐体に組み込んだFOGIMU)
MEMSとFOGのどちらを選べばいいの?
MEMSは内部に振動を検知する可動部があるため測定対象に加わる衝撃や振動が計測ノイズになりえます。一方でFOGはMEMSよりもサイズが大きくなりますが、可動部がないためMEMSより振動をうまく処理できます。

しかしながら、MEMSジャイロもFOGジャイロも精度や価格帯が非常に多岐にわたっています。どの価格帯の製品であれば蓄積誤差が小さくなるのかを予測したいところです。
そこでジャイロのバイアス安定性というスペック値を確認するようにしましょう。計測や制御に使用するようなジャイロの場合、バイアス安定性は(degree/hr)という単位で表記されることが多いです。これは1時間ジャイロのデータを積算したときにどれくらいの角度誤差を持つかを示します。この誤差が小さければ小さいほど誤差が蓄積しにくいジャイロであるといえます。

バイアス安定性はジャイロの精度の最高性能の値を示しますが、上で述べたように性能は経過時間によって劣化していきます。IMUの搭載環境や温度にも性能は左右されることにも留意しましょう。ほかにも重要な指標はありますが、まずはバイアス安定性の数値を控えて検討することをお勧めします。
なお、バイアス安定性の表記が(degree/sec)になっているIMUもあります。このようなIMUは数秒でカタログ値から劣化していく可能性があるので、計測や制御のシーンで利用する場合注意が必要です。